レインボーフラッグは誰のもの

LGBT セクシュアリティ ジェンダー系の話題

「女性トイレ禁止は差別」~トランスジェンダーが遭遇するトラブルを語る時、多くの人に最低限知っておいて欲しいこと

ちょわっす。ひばりちゃんです。

経産省のトイレの件について書きます。

で、そこはひばりちゃんらしく、記事の読み方とポイント、解説といった感じにまとめてみたいと思います。

まずはこれ。トピックが出回ってから翌日朝方までのTwitterユーザーの反応をざくっとまとめたものです。

性同一性障害MtF「女性トイレ禁止は差別」提訴へ~様々な反響 - Togetterまとめ

以後も無数の関連ツイートがポストされ続けましたが、反応をまとめると次のように分類できます。

①オペ(手術)していない(≠戸籍変更していない)

一番多いですね。後述しますが、実は一般の人以上に一部のトランスジェンダーMtF当事者、とりわけポスオペ、戸変組(※)も激しく反応しているのがこの意見です。

②女子職員が反対している

多いです。一般の人、シスジェンダー(※)に多い意見でしょうか。

③多目的トイレ

これは識者、著名人にも見られた反応です。

④見た目、パス度(※)

これは一般の人においては多少なりとも事情を知っている人ですね。LGBT当事者、MtFにも散見された意見です。トイレの使用においては今のところ最も有力な判定基準ではないかと考えられます。

⑤悪用される

これは①に付属する意見として一般、シスジェンダーにも一部のポスオペMtFにも見られた発言です。「のぞき」「痴漢」目的の悪戯と見境が付かなくなるといった意見です。

パワハラ

少ない意見ですが、性別の問題以前に「虐め」や「パワハラ」など、職場にもっと根本的かつ慢性的な問題があるのではないかということです。これは私も感じました。

⑦提訴でトランスジェンダーの立場が悪くなる

圧倒的に当事者に多い意見です。「権利」「権利」と主張することでかえって企業がトランスジェンダーの雇用に委縮してしまうといったもの。

⑧「男に戻ってはどうか?」

上司の人が当人に言い放った発言ですが、シスジェンダートランスジェンダー含め反応した人は極めて激しく反発しています。

記事の読み方

以下は本件を読む上でのポイントです。トランスジェンダーMtFだという前提で解説します。

経済産業省

公務員の職場であったということ。一般に当事者の間では中小より大企業、民間より官界、公営機関の方が「働きやすいはずだ」と考えられてきました。それは大企業や公営機関の方がコーポレート・ガバナンスやコンプライアンスが徹底されている、と考えらえるからです。ところが、今回は事件が「公務員の職場で起きている」こと、そこがポイントでしょうか。

②異動ごとに職場で同障害を公表するよう求めていた

少なくない例ですが、在職トランス(※)の場合、全社員、職員の前で当事者がカムアウトしたり、性同一性障害について自ら説明を行うことがあります(行わないで承認される場合も、もちろんあります)。これが良いことなのか、悪いことなのか、非常に判断が難しいところです。当事者の状態や資質、人格、容姿(パス度)、組織の体質、社風、受け入れ態勢、周囲の理解、様々な条件下でそれが良い効果をもたらすこともあれば、逆に当人の人格、人権を著しく棄損し、周囲の反発を引き起こす最悪の結果をもたらすこともあります。体験された当事者のツイートを例に出しますが、この方は良い例ですね。

f:id:hibari_to_sora:20151110225623p:plain

しかし、人前、しかも大勢の前でカムアウトすることに苦痛を感じる当事者もいます。結果的に職場を追われ、転職を繰り返すといったことになります。また少なくない当事者が日常的な埋没(※)を望んでおり、そのような場合、男性であった過去をあまり人に知られたくないわけですし、また「女性に性転換をした男性」として周囲から認識されたくないわけです(「女性」として扱ってほしい)。したがって、組織内の「異動」には、新しい人間関係と職場を用意することで、当人の過去を清算し、社会適合を促進し、陰口、噂、アウティング(※)による精神的苦痛から当人をガードし、救済する目的が期待されるわけです。ところが「異動ごとに職場でカムアウトしろ」ということになりますと、福祉の目的は失われますし、埋没を志向する当事者にとっては「性別を変えても男性でありつづけろ」と言うに等しく、大変な苦痛となります。

③パス度、女性としての経験値(RLE※)

10年以上の治療過程を有し、改名済み、「初対面の人にも女性として認識され、職場の女子会に呼ばれる」。女性としてのパス度、経験ともに十分積んでいるだろう当事者が見舞われているトラブルだということ。
一般に、当事者のパス度やRLEが十分でない場合、女性として扱うのか、男性として扱うのかトラブルが生じる可能性が高くなります。それはそうですよね。周囲の者がそう見えないし、そう扱えないというわけです。これは戸籍を変えていても(オペをしていても)、していなくても生じるトラブルです(当たり前ですよね。私たちは誰でも日ごろ人と会う時に自分の戸籍や性器を見せたりしませんし、いちいち確かめたりもしません。また確かめたところで男に見えればやはり男ですし、女に見えればやはり女と感じるでしょう)。
ところが本件では女性としてのパス度も経験も十分な当事者がトラブルに見舞われているというのが大きな特徴です。

④(1)労働安全衛生法の省令で男女別のトイレ設置が定められている

事務所衛生基準規則

第十七条 事業者は、次に定めるところにより便所を設けなければならない。

一  男性用と女性用に区別すること。

この省令は労働者の安全、労働環境の管理の観点から使用者、事業者の義務とする衛生基準を定めたものです。男女別のトイレ、設置する個数や規模などは、労働者の健康及び労働環境を維持するためのものです。トイレの用例を定めるものではありません(事業者が事業に応じて男女別のトイレを完備するのは当たり前の話です)。本来は労働者の人格、人権を守るために使用者、事業者の義務とするところのものを、特定個人、労働者に対し「トイレを使わせない」理由にしているのですから、悪用していると言えます。これを理由とするのは、省令のコンセプトから言って「筋違い」でしょう。

⑤(2)女性職員の了解が不可欠だが、2人から「抵抗感がある」との声があがった

前述した反響の②です。後述しますが、当人に承諾なしに女子職員に聴取したとすると「アウティング」の可能性があります。しかしなぜ「女性職員の了解が不可欠」なのでしょうか。

⑥睾丸(こうがん)を摘出するといった性別適合手術

MtF性別適合手術(SRS※)は「睾丸の摘出(去勢)」をするだけにとどまらず、その形状が女性器に類似するレベルまで求められます。これは、まあ、イージーミスでしょう。ここでは取り上げることに意味があまりないので「間違い」だけ指摘してスルーします。去勢しただけでペニスを有している状態では戸籍変更が出来ません。

⑦皮膚疾患などで手術(オペ)が受けられなくなった

この女性(MtF)はオペを何度かしているようですが、SRS(性別適合手術)までは至らなかったようです。ただ、本来ならしてもおかしくない人だったかもしれません。「皮膚疾患」というものがどういったものか判りませんが、ケロイド体質だとオペに適応しない場合があります。ただ、そうでなくても、SRSというのは非常に身体に負担をかけるもので、健康上の理由や年齢など諸条件から受けられる人、受けられない人がいます。また受けても患部が壊死したり、合併症、後遺症などで苦しむ人もいます。「手術(オペ)すればいい」とつい考えてしまいがちですが「そう簡単なものではない」ということは知っておいて下さい。SRSに関しては前述の反響の①でも多くの反応がありました。当事者の間では通称「特例法」と呼ばれる性別変更のための法律、制度にも関わる話です。これも後で説明します。

トランスジェンダーが遭遇するトラブルを語る時、多くの人に最低限知っておいて欲しいこと

さて先に述べた「本件のポイント」を踏まえた上で、もう一度、人々の反応①~⑧まで解説したいと思います。

①オペ(手術)していない(≠戸籍変更していない

実はトランスジェンダーの中には「オペを望む人」と「オペを望まない人」がいます。それぞれのグループに「オペが出来る人」と「そもそもオペが出来ない人」が含まれます。トランスジェンダーの中にはオペをすることに激しく抵抗感を持つ人がいる一方で、オペを強く望み、オペをしないトランスジェンダーに激しい抵抗感を持つトランスジェンダーがいます。
つまり「オペ(手術)をするかしないか」という問題は、トランスジェンダーにとっても激しい対立を生むほど大きな問題だということです。
加えて、日本ではオペをすることが戸籍変更の条件とされています。
以下は、当事者の間ではあまりにも有名ですが、いわゆる「特例法」と呼ばれる戸籍上の性別を変えるための法律に定められた「要件」です。

性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律 - Wikipedia

一  二十歳以上であること。
二  現に婚姻をしていないこと。
三  現に未成年の子がいないこと。
四  生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
五  その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。

四、五がSRS(性別適合手術)に関わる条文ですが、これを満たしても一~三に該当するため、オペをしたとしても戸籍が変えられないトランスジェンダーもいます。このために日本のトランスジェンダーにとってオペをすることは「戸籍を変えること」と「=」でもありますが「≠」でもあります。しかし、一般には手術=戸籍変更だと考えられており、本件もそのような認識の強い影響下にあると考えられます。
実際にはオペをして戸籍変更まで到達するトランスジェンダーとは次のような人たちのことです。

f:id:hibari_to_sora:20151110230218j:plain

特例法が施行された2004年~2014年までに戸籍を変更したトランスジェンダーは累計でわずか5千人弱です。年間数百~500人余りが戸籍を変えて来た計算です(オペをして来ました)。2012年までの日本精神神経学会による調査によると、性同一性障害の患者の推計は約1.8万人と言われています。また札幌医科大学病院の調査では人口2800人に対し1人、約4万人と言われています。
つまり何が言いたいかというと、トランスジェンダーの社会生活上の性別の扱いについて戸籍上の性別を判定基準にするのはあまりにも過酷な現状があるということです。

f:id:hibari_to_sora:20151110230316p:plain

オペをしていないトランスジェンダーへの嫌悪もあり、当人を激しくバッシングする当事者もいました(※発言例はポスオペのMtF当事者の意見です。本来はオペや戸籍変更の絶対視が当事者の間で「GID原理主義」などと称されてきました。ですから、まさに発言例などが「GID原理主義」としてオペをしないトランスジェンダーから揶揄されてきたのですが、発言者はそうした歴史を知らない比較的若い世代の当事者です。パス度も非常に高いようです)。

しかし、こうしたトランスジェンダー当事者の意見は「特例法」という日本のトランスジェンダーに関わる社会制度にも原因があり、根が非常に深い問題だということです。

②女子職員が反対している

非常に多く見られた意見でした。一見して筋が通っているようです。女子トイレの使用者である「女性」のプライバシーを尊重しているように感じられます。しかしこれは当人をトランスジェンダーというより、あくまで「男性」とみなしているということでしょう。このような場合、もし戸籍が変わったら、その途端に人は「男性」を「女性」としてみなしてくれるのでしょうか?
例えば、次のような意見がありました。

f:id:hibari_to_sora:20151222125702p:plain

はるな愛さんは戸籍を変更していませんが、クリスさんは今後戸籍を変える可能性が高いです。こうした場合、どうでしょうか。はるな愛さんは男性だけど、クリスさんは女性でしょうか。これはシスジェンダーの人々がトランスジェンダーの人々の存在をどう考えるか?といった問題だと言えます。

もうひとつ。記事のポイントの⑤で触れたカムアウトの問題にも通じますが、本件の当事者は「黙っていれば女性として通用するMtF」であるようです。こうした場合、わざわざ「実は男性だ」と言うことは本人の不利益になるわけです。女子職員へのヒアリングが本人の承諾なしにもし行われたのだとしたら、これは「アウティング」と呼ばれる行為を使用者(国際機関)が行っていることになります。
例え職場である程度知られていたとしても、黙っていれば何の問題も起きない当事者にカムアウトを強制したり、本人の承諾なしに第三者へのヒアリングを行うことに人道上の問題はないでしょうか。
カムアウトや他の社員、職員へのヒアリングが職場環境、人間関係、また本人の意識に良い効果をもたらすこともあります。しかし、その決定には、使用者と本人に加え、専門医やソーシャルワーカーなどを含めた三者で対話を重ね、慎重に決定されることが望まれます。

③多目的トイレ

これも一見妥当な意見のようですが、ちょうど本件の話題の中、次のようなトピックがありました。

米シカゴの高校でトランスジェンダーの生徒がトイレの使用を許可されず、米国自由人権協会(ACLU)が苦情を申し立て、市民権局が調査をしているというニュースです。学区は「誰でも使える個室の更衣室」を作る提案をしましたが、市民権局は「トランスジェンダーの生徒にとって(個室の)利用が義務になりかねない」と回答しています。

一方、本件です。当人は障害者トイレが工事中だった際に暫定的に認められた「2階以上離れた女子トイレ」を使っていますが、「他の女性職員と平等に扱ってほしい」と訴えています。

完全に女性として生活しているMtFにとって、「2階以上離れた女子トイレ」や「障害者用トイレ」はどんな場所でしょうか。それは現に女性として生きているトランスジェンダーを人々から遠ざけ、隅に追いやり、「隔離」し、特定の場に「閉じ込めている」「軟禁している」ことにならないでしょうか。なぜ人と同様に行動出来ないのでしょうか。なぜ行動が制限されるのでしょうか。みなさんは人とちょっと違うというだけで、自分だけ別室に閉じ込められたら、どう感じるでしょうか。「アウティング」同様、これも人道的に許されることでしょうか。

多目的トイレ、障害者用トイレと聞くと、一件、名案のように聞こえます。確かに特定のトランスジェンダーには必要です。しかしトランスジェンダーには様々なタイプが存在します。別のトランスジェンダーのグループには極めて不適当だと私は感じます。

④見た目、パス度

少なくない人が記事に差し込まれた画像に写る本人と思しき人物を見て判定基準としています。逆に男子トイレに入ることの方が不自然だという意見もあります。

f:id:hibari_to_sora:20151222125723p:plain

トランスジェンダーには様々なタイプが存在するので、見た目やパス度だけを判定基準にするのはどうかと思います。しかし、戸籍変更に要件が設けられており、特定の者にしか戸籍を変える選択肢が与えられない以上、一部のトランスジェンダーには現在、最も有用な判定基準だと私は感じています。
戸籍は変えられなくても、女性に見えることや、実際に女性として生活している実績があれば、それは女性として扱うに不足ないだろうと。
こう言うと、じゃあ公衆浴場などにペニスが付いたままのトランスジェンダーMtFが入ってくるじゃないかという人がいます(これは当事者にも一般の人、シスジェンダーにも一定数います)。

f:id:hibari_to_sora:20151222125751p:plain

また「特例法」要件の五の理由としては「公衆浴場などで社会的な混乱を生じないために考慮された」ことがあげられます。
しかし、よく考えてみて下さい。トラブルを起こすことはトランスジェンダーにとってもリスクが高いのです。せっかく手に入れた望む性別での生活と引き換えにリスクの高い行為に及ぶトランスジェンダーがそんなに多くいるとは考えられません。いたとしても、トランスジェンダーの一人や二人、いたからどうだと言うのでしょうか。市井の内の出来事としてトラブルを積んでいけばいいのではないでしょうか。そうして、市民の習慣や文化が出来ればいいと私は思います。これは私たちの文化意識の問題でしょう。

⑤悪用される

一定の判定基準を満たさないトランスジェンダーにトイレの使用を許すと、性別別のトイレの目的が失われ、「トランスジェンダーであること」が「覗き」や「痴漢」、悪戯や犯罪に悪用される、という意見です。

f:id:hibari_to_sora:20151222125822p:plain

f:id:hibari_to_sora:20151222125839p:plain

f:id:hibari_to_sora:20151222125806p:plain

しかし、本件の当人は10年以上の診断過程を有し、ホルモン治療やSRSを除くいくつかのオペを受けています。改名し、初対面の人には女性として認識され、職場の女子会に呼ばれるほどの経験を積んでいるMtFです。
昨日男性だった人が今日突然「やっぱ俺、心が女性だった」などと言い出し「女子トイレを使わせてくれ」と言っているのでは全くない、ということです。

パワハラ

f:id:hibari_to_sora:20151222125923p:plain

人事院に処遇の改善を求めた」が認められなかったとあります。また公表することを一定期間拒否し続けていたようです。公表することへの抵抗感から異動希望が出せなくなり「うつ病」となって「1年以上休職」しています。
この扱いには、当人がトランスジェンダー、あるいは一人の女性としてどのような状態であったとしても、それ以前に一職員に対する処遇として妥当性が見いだせません。
上司や周囲の人たちの能力、また職場にコンプライアンスが存在したかどうか、問題を感じずにはいられません。本件以外にも職場にハラスメント行為があったり、偏った力関係、上司、職員として問題のある人物はいなかったでしょうか。

⑦提訴でトランスジェンダーの立場が悪くなる

f:id:hibari_to_sora:20151110231557p:plain

f:id:hibari_to_sora:20151110231609p:plain

これは発言者も賛同者もほとんどが当事者です。共感を得ていることが判るでしょう。

先述したように戸籍を変えられるトランスジェンダーの人たちというのは、トランスジェンダーの中でもごくわずかな人たちです。ほとんどのトランスジェンダーは、戸籍を変えたくても変えられないか(オペがしたくても出来ない、オペをしても戸籍を変えられない)、オペをしたくない人たちです。本件は女性として十分に実績があるMtFが遭遇している事件です。これを放置することは、どんなに私たちMtFが努力し、女性に近づいたとしても、戸籍を変えない以上女性として扱われないという現実を放置することに等しいのです。またトランスジェンダーに対し、性別の判定基準を性器の形状や戸籍制度に求める人たちはトランスジェンダーアイデンティティを本当に大切にしてくれる人たちだと言えるでしょうか。そのような人たちは戸籍を変え、手術をし、いかなる努力をしたとしても、やはり私たちトランスジェンダーの存在を認めないのではないでしょうか。
しかし、この意見が実に一般の人、シスジェンダーだけでなく、トランスジェンダーの人たちにも広く蔓延していることは、日本のトランスジェンダーの人々がいかに法律による規制を内面化しているか、よく表している現象だと言えます。

⑧「男に戻ってはどうか?」

当人に上司が言い放ったとされる言葉です。これは同性愛もそうなのですが、一部のゲイ、レズビアンバイセクシュアルトランスジェンダーの人々の「性指向性」、「性自認」といったものは生まれ持ったものであり、また人格であり、人権の一部です。それは何人からも「強制」を受けないし、与えてはならないとされるものです。判り易く言うと、例えとしてエスニシティを持ち出すのは良くないかもしれません。しかし、許して下さい。例えば、この発言は、ある特定の人々に「肌が黒いから白くしたらどうか?」とか、「日本に帰化したらどうか?」と言ってしまうことに等しいのです。判るでしょうか。もう徹底的にアウトな「差別発言」です。私はこの発言だけで上司とおよび関係する重役数人の首が飛んで良いとすら思います。
一部のトランスジェンダーMtFは「男性から女性になった」のではなく、もともと「女性」であったから「女性として」生きようとしています。トランスジェンダーには様々なタイプがいて「そうでない」人もいます。しかし、一部のトランスジェンダーはもともと「そういう人」なのです。MtFの一部の人々は初めから自分は女性だと自己について強く認識していますし、FtMの一部の人々は初めから自分は男性だと自己について強く認識しています。
それは「戻ったり」、「治ったり」しないのです。

ジョグジャカルタ原則 - Wikipedia

性的指向とは各個人の異性、同性又は両性への深い情緒的感情、好意的感情、そして性的魅力、そして親密な関係や性的な関係に関わる事項であることを理解し、性自認とは各個人の人格としての性別により深く感じられた内的で個人的な経験、そして身体に対する性別の感覚(自由な同意によりなされた場合は、医学的、外科学的、及びその他の方法による身体的外見や機能の変更も含む)や服装、話法、振る舞いといった人格的性の表現も含めた経験に関する事項であり、それは出生の際に(外性器により)判別される性別に対応することもあればしないこともあることを理解する。

判定基準はどこ?

手術をしても戸籍を変えられないでいるトランスジェンダーや、手術、ホルモン治療を十分に受けられないトランスジェンダーがいます。そうしたトランスジェンダーは、これらが十分に行き届いているトランスジェンダーの何倍も存在します。それで、そうしたトランスジェンダーの性別の取り扱いの判定基準(本人の性別の自覚、意識「性自認」は尊重するようにしましょう。そうではなくて、例えば職場での扱いですね)をどこに求めるか?ということです。

f:id:hibari_to_sora:20151110232111p:plain

やはり本人の状態、診断を受けている、パス度やLREの実績があること、本人の望む性別で人とコミュニケーションが出来ることなど、客観的事実を判定基準にするのが今のところ最も妥当であり、様々なタイプのトランスジェンダーにとっておしなべて有益だと考えられます。
私たちはなぜトランスジェンダーの戸籍や性器の形状に拘っているのでしょうか。
みなさんは上司や部下と仕事をするときに彼/彼女らの戸籍や性器の形状を気にしていますか?なぜこれらに拘らないと私たちは一緒に仕事が出来ないのでしょうか。

 

以上。
ひばりちゃんでした。またね。


一般の人、当事者の意見はモザイクをかけています。ま、検索すればヒットしますけど、個人への批判が目的ではないので。著名人のツイートは露出しています。希求力、説得力があること、本人の不利益にはならないことから。

☆原稿の転載、取材、講演、受け付けます。お知らせ下さい。

hibari.mizuno@gmail.com 水野ひばり

 

(※印)がついた説明
ポスオペ、戸変組…ポストオペ→手術済。プレオペ→手術前。戸変組→戸籍を変えたトランスジェンダーのグループ。
シスジェンダー…「シス」は「同じ側」を意味します。その対義語が「トランス」。というわけで、トランスジェンダーに対して「シスジェンダー」とは「性別を変えない人」(一般の人)の意。
パス度…パス度の捉え方には様々ありますが、一般に「女性としてパスする」とは「女性として通用する」「女性にみなされる」「女性に見える」ことを意味します。「度」なので「パスする度合い」のこととなる。「パス度が高い」→「パスする度合いが非常に高い」→「とてもそう見える」(すごく女性に見える)。
在職トランス…同一の職場において男性から女性へ、女性から男性へと性別を変えること。この場合、以前の性別であった様子を知っている同僚や上司が職場に存在することとなる。「在学トランス」→学生の間、ある就学過程の中で性別を変更する。
埋没…性別を変えた人がシスジェンダーと見分けが付かなくなるほどに日常生活に溶け込んでいる様。普通の男性や女性と見分けが付かなくなること。「クローゼット」とも言う。なお親、兄弟、過去を知る者など世の中に存在するため「完全な埋没」は不可能だと言われています。
アウティング…ゲイやレズビアンバイセクシャルトランスジェンダーなどに対して、本人の了解を得ずに、本人が公にしない、あるいはしたくない性的指向性自認を第三者が暴露すること。アウティングという概念が知られていないために、暴露を目的とする意図的なもの以外に「結果的にアウティングとなる」場合も多々存在します。
RLE…Real Life Experience 実生活の経験。性別を変える人が望む性別で実際に生活を行い、その体験を重ねること。性同一性障害の診断過程においても判定基準とされています。
SRS…Sex Reassignment Surgery 性別適合手術性別再判定手術。「性転換手術」は「性転換」がスティグマであることや、元の性別を含意することなどからフォーマルな場、当事者の前ではあまり使わない方がいい。当事者同士の日常的会話では単に「オペ」と呼ばれる。(例)「○○ちゃん、オペしたって」